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OriolusとSympathie Worksのペアリングガイド第二回: Isabellae



第一回目のTrailli JPに続く第二回目は、Oriolusブランド創設初期から7年もの開発期間を費やしたという拘りのシングルダイナミック式イヤホン、Isabellaeのレビューです。自然で伸びのある音、滑らかなのにはっきりした音ということ。一体どんな感動を届けてくれるのでしょうか。

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まずは、銀メッキ銅線の標準ケーブルにて。開発コンセプト通り、自然でありながらも輪郭が感じられ、柔らかさがありながらも芯があり、絶妙なバランスの音楽が聴こえてきました。クラッシック、バラードや女性ボーカルなど、相性が良いだろうと予想したジャンルの曲は、自然さと甘やかさをもって軽々と奏でてくれます。また、ロックやヘヴィメタル曲を再生しても分離感が感じられますし、背後の音を邪魔しない響きや余韻すら表現する余裕があり、ギターのカッティングなどは軽やかに気持ちよく耳をくすぐります。

実は、今まで1DDという構成のイヤホンでは、自然すぎてイヤホン独特の気持ちよさが感じられなかったり、どこかにフォーカスが絞られるとほかの部分はあまり芯を感じられないものが多い印象で、例外的な数本を除いてあまり好みではありませんでした。ところが、このIsabellaeは高いポテンシャルを備え、自然ながらも芯があるという難しい要素を両立させていることから、私にとって例外的な数本の一つに仲間入りすることになりました。Sympathie Worksのケーブルと合わせたら、どんな一面を見せてくれるのでしょうか。

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まずはSW25 Osiris。銀と金の合金線からなるケーブルです。イヤホンの実力を引き出してくれる究極のリファレンスケーブル的な存在で、発売以来、根強い人気を誇ります。Isabellaeに合わせると、自然ながらも輪郭のある音というところはそのままに、低域の迫力が増して輪郭もさらにくっきりとし、自然ながらも伸びやかな高音、そして美しい中高音の煌めきを感じさせてくれました。この組み合わせでも十分に美しく自然な音を楽しめますが、ここをレファレンスにSympathie Worksの他のケーブルも試してみましょう。

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次に試したのは、SW28 Hathor。金メッキ銀線からなるケーブルです。銀メッキ銅線などでもそうですが、金メッキ銀線というものは奥が深く、同じ素材で出来ていても、音の傾向が全然違うということがよくあります。IsabellaeとSW28の相性はどうなのでしょう。まずは、見た目。琥珀のようなIsabellaeに、美しく明るい黄金色のケーブル。蓋が開いた宝石箱から零れ落ちる金のネックレスのように煌びやかですね。そして、音。IsabellaeをSW28に合わせると、より自然なSW25に対し、輪郭を崩さない程度に中高域にあたかかみがほんのり乗って、より生々しく甘やかな響きをともないます。ボーカルは実在感が増します。結果、自然さは実在感までに高められ、低音のまとまりや迫力も増し、高音が美しく伸びゆく素敵な世界を感じることができました。

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こうしてIsabellae特有の音の自然さを追及していくと、Sympathie Worksフラグシップケーブルの一つ、SW29 Zeusも試したくなります。金メッキ銀線、パラジウムメッキ銀線、銅線からなるケーブルです。全域にわたって解像度が高く、音に芯があって小気味よく、それでいて音楽的なまとまりを感じさせてくれる大人気のケーブルです。Isabellaeはもともとポテンシャルが高そうだったので驚きませんが、解像度が段違いに高まり、背景で奏でられる楽器の細かい弦の震えや音の消え際まで感じられるほどです。低音もタイトでありながら迫力をともなって強くなり、全体として音楽を聴くにはこのバランスこそが自然といえるのではないかと思わせる説得力があります。全体を俯瞰すると、自然よりも自然に、より美しく感じられるように演出された日本庭園を思わせる世界観がそこにあります。

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そして次に、近日発売予定の新作SW34。名前はParadis Eros MKⅡ。色々な線材の組み合わせや芯数でベストバランスを追究した末ようやく誕生した最新作です。素材は金メッキ銅線と銀金合金線になりました。初代Paradis Eros(終売)の美しい見た目やメリハリの利いた美音という特徴は残しつつ、より質の高い音を聴かせてくれます。Isabellaeに合わせると、自然なのに力強いアタック感、より輪郭のはっきりした美しい中高域に耳を奪われます。美しい響きや余韻もしっかり感じられ、解像度も高くてキレが良く、全体的なバランスとまとまりが素晴らしいです。大地の力強さに生命の息吹のようなものまでが感じられる、大自然とのマリアージュともいえる組み合わせです。

Sympathie Worksの他のケーブルも試しました。例えば空間が広がるSW33や超解像度のSW32をIsabellaeに合わせると、日本庭園というよりはフランス式庭園になったかのようで、また別の楽しさや美しさがありました。それもいいのですが、ここは開発のコンセプトに沿って、もともとのIsabellaeの特性を活かしたまま限界まで性能を引き出せるSW29やSW34で聴いてみて頂きたいです。自然を感じる心で音楽を楽しみたいならSW29、自然の持つ力強さを迫力とともに体感したいならSW34がおすすめです。

Isabellae、リケーブルすることによって自然さと迫力を極限まで引き出せる、ポテンシャルのとても高い、ポリシーを感じられる美しくて素晴らしいイヤホンでした。