OriolusとSympathie Worksのペアリングガイド第三回: Monachaa
1DDのIsabellaeに続く第三回目は、業界初のクアッドダイナミックドライバー構成を採用したカナル型イヤホン、Monachaaのレビューです。4DDというものは想像もしていませんでしたので、時々訪れるお店で偶然見かけたときは、それはもう心が躍りました。そしてDD(しかも4機)とは思えない繊細で解像度の高い自然な音色が聴こえてきたときの感動は、まだ記憶に新しいです。付属の標準ケーブル、そしてSympathie Worksのケーブルと合わせて、Monachaaのどのような表情が見れるのか、試してみましょう。
まずは、PW audio製の特注Ensemblケーブル(銅線)にて。4DDと銅線というイメージから、低域が支配する迫力ある世界をイメージして聴くと、良い意味で予想を裏切られます。1DDのように自然でバランスのとれた各帯域の音のつながりも滑らかなのですが、シングルダイナミックでは難しかったであろう密度感と解像度、そしてそれぞれの帯域の明瞭さもしっかりあります。1DDと多ドライバーそれぞれのいいとこどりをしたイヤホンというところでしょうか。とてつもない技術力を感じます。
Monachaaは音に関して完成度が高い上、ケーブルの音色なども反映しやすく、オーディオファン好みの組み合わせを見つける遊び心をもたらしてくれるとのこと。リケーブル後の音色が特に印象に残った組み合わせをいくつか紹介します。
Monachaaは音に関して完成度が高い上、ケーブルの音色なども反映しやすく、オーディオファン好みの組み合わせを見つける遊び心をもたらしてくれるとのこと。リケーブル後の音色が特に印象に残った組み合わせをいくつか紹介します。
SW30 Cheval Blanc。銅線と銅を主体とした合金線からなるケーブルです。イヤホン本来の個性を損なうことなく上品な弱ドンシャリ傾向にしてくれる、リスニングに適したケーブルです。付属ケーブルと同じく銅を主体としていますが、合金というものはほんのわずかな要素やさじ加減で性質が異なるもので、全く違う一面を見せてくれました。明瞭な中高音が鮮烈に気持ちよく鳴り響きます。低域の躍動感も高まり、イヤホン本来の音の自然さも保たれていて、音場が広く感じられます。上方にキレイに消えゆく高音、下で力強く支えるサブベース。美しく自然でありながら鮮烈に描かれた世界観は、絵に例えるなら、付属ケーブルが印象派とすれば、SW30は写実派といえましょう。定位感の良さも相まって、ボーカル曲にはとてもリアリティがありますし、ジャズなども美しく情感たっぶりに聴くことができます。
SW33 Albileo。銀と金の合金線と銅線で構成されるハイブリッドケーブルです。音場が広く、それと同時に中高域は極めて明瞭という、一見矛盾した要素を兼ね備える試作に試作を重ねて出来上がった自信作です。こちらを装着しますと、美しくも凄みのある中高域、豊かな響きをともなう芯のある低音など、一段とハイエンドイヤホンの醍醐味ともいえるような特徴が強まります。Monachaaでないと表現できない、いわゆる音の自然さというものを超越してリスニングのためにその性能を最大限に発揮したかのような心地よさ。紛れもなくMonachaaの潜在能力を余すところなく見事に捉えています。ロックなどもノリノリで聴けますし、歌声も刺さらないギリギリを攻めていてゾクゾクします。
SW32 Graffias。金メッキ銀線、パラジウムメッキ銀線、グラフェンのトライブリッドです。高い解像力とハイトーンからサブベースにまでおよぶフラットなサウンド傾向が特徴の、独特の表現力と一音一音の粒感のある美しさが楽しめるケーブルです。このSW32をMonachaaに合わせたときのサウンドには、粒子感があり現実味を帯びた、まるでアルバムを見返したときに懐かしさを感じるフィルム写真のような趣がありますです。そんな懐かしの写真を時を忘れて眺めてしまうように、この組み合わせには一旦手に取るとすっかり聴き入ってしまう魔力があります。
近日発売予定の新作SW34。名前はParadis Eros MKⅡ。追い求めた末ようやく誕生した最新作で、素材は金メッキ銅線と銀金合金線のハイブリッドです。このケーブルもまた、その独自のアタック感かつ迫力と芯のあるサウンド傾向がMonachaaの個性に重なるところがあるせいか、お互いの特徴を増幅しあってどんな曲でも楽しく聴ける組み合わせとなります。足し算を期待していたら、その似通った個性同士の掛け算になったかのように。まるで目に見えるかのような低域のうねりと躍動感の上に生々しいボーカルが乗って、歌ものやロックを聴いた時の気持ちよさは言葉にならないほどです。
リケーブルによって自在に変化することができる高いポテンシャル、なおかつMonachaaらしさはしっかりと維持する確固たる個性。様々なケーブルでその良さが余すところなく発揮される素晴らしいイヤホンでした。